整数 講義NO.1

整数

今回は素数に関して講義したいと思います。整数問題を解く際にカギとなってくるところです。

定石

① 余りで分類
② 積の形を作る
③ 不等式で絞り込む

一般に言われる整数問題の定石ですが、このうちのひとつだけを用いればよいというのではなく、複数を組み合わせていくことが求められます。今回はこの中でも素数を解説しますが、②の積の形に表したとき素数が出てくるとありがたいことがあります。では、まず素数の定義から見ていきましょう。

素数の定義

$p$が素数であるとは、$p$が1と$p$自身以外に正の約数をもたない2以上の自然数であることをいう。

また、1でも素数でもない自然数を合成数といいます。合成数とは、積の形$pq$で表せるものと覚えている人が多いですが、1を忘れないように注意しましょう。したがって、1は素数ではありません。
次に、素数の定義からこのような素数の性質が言えます。

素数の性質
$a, b$が自然数、$p$が素数のとき、$ab$が$p$の倍数 $\Longrightarrow$ $a, b$の少なくとも一方は$p$の倍数である。
では、この性質を用いて素因数分解の一意性を示していきましょう。
素因数分解の一意性
$n\geqq 2$とし、$$n = pqr\cdots = p'q'r'\cdots \Longrightarrow p, q, r, \cdotsとp', q', r', \cdotsは全体として一致する。$$
($p, q, r, \cdots , p', q', r', \cdots$は素数)
証明

$pqr\cdots = p'q'r'\cdots \cdots\cdots$① とする。
①より、$$p'q'r'\cdotsは素数pの倍数$$
であるから、素数の性質より、$$p', q', r'\cdotsの少なくとも一つはpの倍数$$
である。ここで、$p'$が$p$の倍数としても一般性を失わない。このとき、$p$は$p'$の約数であり、素数$p'$の正の約数は$1, p'$のみなので、$p=1$または$p=p'$であるが、$p$は素数であるから、$p\geqq 2$であり、したがって$p=p'$である。
①の両辺を$p=p'$で割ると$$qr\cdots = q'r'\cdots$$
となり、上記と同様の議論を繰り返せば$q=q', r=r', \cdots$が得られ、示される。

また、かなり自明に近いですがこのような定理もあります。
素因数分解定理
1以外の自然数は有限個の素因数の積として表される
証明

$a$を1以外の自然数とする。$a$が素数ならば$a$自身が$a$の素因数分解である。$a$が素数でないとすると、それは合成数である。合成数の定義より、自然数$b, c$を用いて$$a=bc$$   $1 < b < a,  1 < c < a$と表される。$b, c$がともに素数であるときはこれが求める素因数分解である。
$b$ (または$c$)が合成数のときは、再び合成数の定義より、$$b=b_1 b_2$$   $1 < b_1, b_2 < b $ (または、$c=c_1 c_2   ,1 < c_1, c_2 < c$)と表される。このとき、$$a=b_1 b_2 c$$ (または、$a=bc_1 c_2$)である。このようにして、次々と因数の積に分解していくと、素数の最小値は2であるから、この分解は有限回で終了する。

この定理が主張していることは当たり前のことです。例えば、3は素数である3だけ(1個)からできているし、119なら、119=7$\cdot$17より、素数7と17の2個の積からできています。
さて、素数というのは自然数の中でも特別な数だということはわかったと思います。では、素数はどのくらい存在するのでしょうか?素数に関する研究は昔から行われており、素数が無限に存在することは古代ギリシャ時代にはすでに解決されています。様々な証明が明らかにされていますが、そのうちの一つを紹介しましょう。
素数は無限に存在する
証明

背理法を用いる。つまり素数が有限個しかないと仮定する。そこで、素数が$m$個あるとし、それらを$p_1, p_2, \cdots, p_m$とするとき、
$$a = p_1p_2\cdots p_m + 1$$
は自然数であるから、素因数分解定理より素因数をもつ。そのひとつを$p$とし、$a=pq$とする。仮定より、$p$は$p_1, p_2, \cdots, p_m$のどれかと一致するから、$p=p_1$としても一般性を失わない。すると、
$$1 = p(q-p_2 \cdots p_m)$$
となり、$p\geqq 2$は素数で、$q-p_2 \cdots p_m$は整数であるから矛盾。よって、素数は有限個ではない。

無理数の証明でも背理法は定石ですが、やはり否定形の証明では背理法が有効ですね。
(補足) 一方、まったく異なる証明をした人がいてそれはオイラーです。
素数の逆数の和 : $\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{5}+\cdots$
を考え、この無限級数が無限大に発散することを示し、素数が無数にあることを証明しました。

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