整数問題の攻略法はある程度パターン化されているように思えますが、根底にあるのは実験です。いろいろ試してみると突破口が見えてきます。今回はいわゆる「絞り込み」というパターンにはめられる問題の解説をしていきたいと思います。整数問題のときに大事なのは「このような問題のときはあのパターンかな?」という考え方ではなく、愚直に「実験してみよう!」と思うことなのです。
例えば「〇〇の条件を満たす自然数nの最大値を求めよ」という問題ならまずn=1から代入していって、条件を満たすから次は2を代入してみる、といった具合です。まあ、いろいろ問題を解いていきながら示していきましょう!それではこのような問題です。
2つの不等式
をみたす整数の組$(a, b, c)$をすべて求めよ。
$$ab+bc+ca+1\leqq 3a^2+1$$
確かに右辺は$a$だけの式になりずいぶん見やすくなりました。しかし、真ん中の$abc$とあわせると
$$abc\leqq 3a^2+1$$
となり、うまくいきません。
$abc$と比較するわけですから、右辺も積の形で残すことを意識しましょう。そこでポイントになるのが、塊(積)とみて$ab, bc, ca$のなかで最大なのはどれか?です。もちろん$ab$ですからぜんぶ$ab$と比較しましょう。するとこのようになります。
すなわち、
$$abc < 3ab (イコールはつきません)$$
ですから、$ab$をまとめて消せますね。すると$c < 3$といううれしい$c$の条件が得られました。$c$は整数ですから、$c=1, 2$に限られますよね。もうここまで来たらあとは楽勝です。しらみつぶしに$c$を順に1, 2と代入するだけです。
それでは解答です。
続いて整数問題でよく使う背理法を扱った問題を解説していきます。今まで「無理数であることを示せ、のときは背理法を使う」と覚えている人が多いのではないでしょうか。いわゆる否定命題のときは背理法をつかうのは受験数学では定石ですね。ところでなぜそうするのかといえば、もちろん直接証明するよりも簡単でやりやすいからですが、「否定命題のときは背理法」とだけ覚えていてもなかなか応用が利きません。ではとりあえず今回は背理法を用いる問題を1題解説していきましょう。このような問題です。
(1) $log_2 5$は無理数であることを示せ。
(2) $p\geqq 2, q\geqq 1$なる整数$p, q$に対して、${log_p (p+1)}^\dfrac{1}{q}$は無理数であることを示せ。
さて、ここまでの設定でつまる人はほとんどいないでしょうが、先ほど数学的な矛盾を導くと言いました。数学的であればどのような矛盾でも構いません。例えば、左辺は偶数なのに右辺は奇数であるというのも立派な数学的矛盾です。ここがポイントで背理法を設定してからどのように矛盾を導くかを意識しないといけません。ところが問題を見ただけではどこで矛盾するかはわかりませんから、とりあえず式を変形してから考えましょう。(1)では、$log_2 5=\dfrac{n}{m}$とまず設定できますから、これを変形すると$5=2^\dfrac{n}{m}$となり、$5^m=2^n$になります。これは、左辺が奇数で右辺が偶数ですから明らかに矛盾ですよね。(素因数が異なるという言い方もします) (1)は多くの人ができると思いますが(2)で差が開くと思うのでじっくり見ていきましょう。
(2)も有理数と仮定(ウソをつく)するところは大丈夫でしょう。すなわち${log_p (p+1)}^\dfrac{1}{q}=\dfrac{n}{m}$と設定します。(1)同様に式を変形していくと(特に難しい変形はしません)、結局$(p+1)^{m^q}=p^{n^q}$という式にたどり着きます。さて、この式から数学的矛盾をどう導きましょうか。両辺とも累乗が複雑でわかりにくいですね。2乗なら2回かけるだけですよね。100乗なら100回かけるだけです。では、今回は?左辺は$m^q$回、右辺は$n^q$回かけるだけです。見た目に惑わされないでくださいね。さあ、もうひと踏ん張りです!奇数は奇数回(例えば5回)かけても偶数回(例えば8回)かけても奇数です。(3の5乗も3の8乗も奇数ですよね) 偶数も奇数回(例えば5回)かけても偶数回(例えば8回)かけても偶数です。今、$p$と$p+1$は連続する整数ですから当然どちらかが奇数でどちらかが偶数です。となると両辺で偶奇が異なりますよね。
では、解答です。
(1) $log_2 5$が有理数であると仮定する。
つまり、$log_2 5 > 0$より、互いに素な自然数$m, n$に対して、
$$log_2 5 = \dfrac{n}{m}$$
と表せると仮定する。
変形すると、$$5=2^\dfrac{n}{m}$$
$$\therefore 5^m=2^n$$
となる。
しかし両辺の素因数が異なり矛盾。
よって、$log_2 5$は無理数である。
(2) ${log_p (p+1)}^\dfrac{1}{q}$が有理数であると仮定する。
つまり、${log_p (p+1)} > 0$より、互いに素な自然数$m, n$に対して、
$${log_p (p+1)}^\dfrac{1}{q}=\dfrac{n}{m}$$
と表せる。
$$log_p (p+1)=(\dfrac{n}{m})^q$$
$$\therefore p+1=p^\dfrac{n^q}{m^q}$$
$$\therefore (p+1)^{m^q}=p^{n^q}$$
$m^q\geqq 1, n^q\geqq 1$より、両辺の偶奇が異なり矛盾。
よって、${log_p (p+1)}^\dfrac{1}{q}$は無理数である。
最後にもう一題無理数の証明問題をやってみましょう。
三角関数が出てきたとき、有名角でないと値を計算するのは難しいですが、2倍角、3倍角を導入することで求まることもあります。今回もやはり有理数であると仮定して矛盾を導きますが、$\dfrac{a}{b}$とは置きません。
3倍角の公式 : $\cos 3\theta = 4\cos^3\theta-3\cos\theta$
で$\theta = 20^\circ$とおき、
$\dfrac{1}{2}=4\alpha^3-3\alpha$$\therefore 8\alpha^3-6\alpha-1=0$であるから、$\alpha$は$f(\alpha)=0$の解である。$ (f(\alpha)= 8\alpha^3-6\alpha-1)$
$\alpha$が有理数であれば、
$\alpha = \dfrac{1の約数}{8の約数}$ =$\dfrac{\pm1}{\pm1, \pm2, \pm4, \pm8}$
$=\pm1, \pm\dfrac{1}{2}, \pm\dfrac{1}{4}, \pm\dfrac{1}{8}$
であるが、いずれの場合も$f(\alpha)=0$にはならない。(ここから矛盾が導けた。)
よって、$\cos 20^\circ$は無理数である。
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