極限No.3(追い出しの原理)

$\infty$にいくことを証明したい場合に用いることが多いのが追い出しの原理です。
直感的にも明らかですが、$\infty$よりも大きいならば$\infty$に発散する、ということです。

           追い出しの原理
関数$f(x) < g(x)$ かつ$\displaystyle\lim_{x\to\infty}f(x)=\infty$ であるとき、 $$\displaystyle\lim_{x\to\infty}g(x)=\infty$$ が成立する。

では、追い出しの原理を使う問題を見ていきましょう。

滋賀医大の問題なので少し難しいですがチャレンジしてみましょう。

$(1)  a_1=b_1=1, a_{n+1}=a_n+2b_n, b_{n+1}=a_n+3b_n(n=1, 2, \cdots)$のとき、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}b_n=\infty$を示せ。
(2) (1)と同じ設定で$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\infty$を示せ。
まず、方針ですが漸化式を解いて$a_n$, $b_n$の一般項を求めることは難しいとすぐわかるでしょう。(1)で求めたいのは$b_n$が$\infty$に行くことなので、追い出せないかを考えられるとよいですね。要は、目標にしたいのは$b_n > (nの式)$という形です。(例えば、$n$が分母に来る場合は0になりこういうのはダメです。あくまで$b_n > \infty$となることが目標です) (1)では$a_n$が定数で抑えられれば$b$の漸化式となり解けます。ただ、$a_n$が0より大きければ$b_{n+1} > 3b_n$となりもっと簡単に解けますね。(2)は前者で考えます。このように考えていくとよいでしょう。
では、解答です。
(1) 漸化式より帰納的に$a_n > 0, b_n > 0$であることが分かるので、
$$b_{n+1}=a_n+3b_n > 3b_n$$
$$\therefore b_{n+1} > 3b_n$$
これを繰り返し用いると、$b_n > 3^{n-1} b_1$であり、右辺$\to\infty$ゆえ、追い出すことができ、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}b_n=\infty$が示される。
(2)  同様に漸化式から帰納的に$a_n > 0, b_n \geqq 1$であることが分かるので、
$$a_{n+1}=a_n+2b_n \geqq a_n+2$$
$$\therefore a_{n+1} \geqq a_n+2$$
これを繰り返し用いると、$a_n \geqq a_1+ 2(n-1)$であるので、追い出すことができる。よって、
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\infty$が示される。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\displaystyle\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{\sqrt{n+k}}$を求めよ。
形からすると区分求積法を利用したくなりますが追い出すと非常に簡単です。
まずは区分求積法を使った解答です。
$$\displaystyle\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{\sqrt{n+k}}=\dfrac{1}{\sqrt{n}}\displaystyle\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{\sqrt{1+\dfrac{k}{n}}}$$
$$=\sqrt{n}\cdot\dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{\sqrt{1+\dfrac{k}{n}}}$$
である。
$$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{\sqrt{1+\dfrac{k}{n}}}
=\displaystyle\int_{0}^{1}\dfrac{1}{\sqrt{1+x}}$$
$$=\left[2\sqrt{x+1}\right]^1_0$$
$$=2(\sqrt{2}-1) > 0$$
$$\therefore \displaystyle\lim_{n\to\infty}\displaystyle\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{\sqrt{n+k}}=\infty\cdots\cdots(答)$$
では、追い出しの原理を使ったときの解答です。
$$\displaystyle\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{\sqrt{n+k}} \geqq \displaystyle\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{\sqrt{2n}}=\dfrac{\sqrt{n}}{\sqrt{2}}$$
となり、$n\to\infty$のとき$\dfrac{\sqrt{n}}{\sqrt{2}}\to\infty$であるから追い出しの原理より
$$ \displaystyle\lim_{n\to\infty}\displaystyle\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{\sqrt{n+k}}=\infty\cdots\cdots(答)$$
である。

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